12年5月14日 その4
しかし蒸すのう 日差しも強くなってきたので手拭いをほっかむりにしたった 誰が見てもドロボーだお
ウパーマ ウパーマまたはウッパマとは、沖縄では「広い浜」を意味する 星砂で有名な浜だけど、ゆえに難しい問題があってね
というのも、この島のものは小石ひとつ持ち出さないルールになってる 強制力のあるものではないけど、それが訪問者の最低限度のマナー
でもなー こうなっちゃうよなー 観光マップにも「星砂の浜」と明記されてるし 女の子は絶対に欲しいものね
自然保護と観光収入のバランスは全国共通の悩み
近付いてきたな
カベールムイと呼ばれるクバの森
この長い一本道の果てに、神の岬がある
ハビャーン 別名:カベール 沖縄の創世神・アマミキヨが降臨したと云われる沖縄有数の聖地 また、壬の日には竜宮神が馬の姿となってここに現れ、島を巡回すると云われている アマミキヨについては別頁で扱うとして、ここでは竜宮神について紹介する 動画(右クリックから保存)
竜宮神は「タティマンヌワカグラー」と呼ばれている タティマンは2頭、若は若い、グラーは男子を意味する その姿は文字通り2頭の若駒(馬)と云われている
タティマンヌワカグラーは壬の日の早朝、馬の姿でハビャーンに出現し 白い鬣を靡かせて島を巡回し、外間殿(フカマ/ウプグイ)に立ち寄ると云われている 竜宮神をニレー大主神とする説もあるが、よく分からないのでスルー
このハビャーンはヒータチと呼ばれる祀りの場でもある 大漁を祈願し、旧暦2月の壬・癸の日に行われる これを司るのはソールイガナシーという男性の神役であるが 実際に祈祷をするのは祝女を始めとする神女である 今年は2月17日に行われた
ソールイガナシーは竜宮神に通ずる神役で、久高島の漁撈のリーダー 村頭経験者で60代の男性にのみその資格が与えられ 外泊が禁じられるなど行動が厳しく制限されるため2002年で途絶えてしまった
祝女については比較的有名なので興味がある人はググって下さい 「イザイホー」で調べると分かりやすいかも
そんなわけで、いろいろノーガキを並べたけど んなこと言われてもピンとこねえよっ!って声が聞こえてきそう
簡単にまとめると、あの海の果てにニライカナイがあるということ かつてアマミキヨが降臨し、沖縄を創世し 今もタティマンヌワカグラーが訪れては久高島を駆け巡っている 人々はそう信じている
まあ、神話の世界の話なのでね 理解する必要はない へーそうなんだーくらいで十分
散策に戻ろう 島の縦に貫く道を下って、最初に見えるのがこれ
ロマンスロード 神話とは全く無縁で、観光用途で造った施設
もちろん大失敗
だって何にもないんだもん きれいな海が見えるだけで
無理して観光客を喜ばそうとしなくていいのにな
でも、この辺りから周囲の空気がガラっと変わる 久高島最高の霊場、ウプウガミが近いからか
最高最高って、一体どこが最高なのよ? そんな疑問を抱いたあなた 今度こそ本当の最高なのでご安心を
ウプウガミ 別名:フボー御嶽/クボー御嶽 アマミキヨが創った琉球開闢七御嶽のひとつ 斎場御嶽と並ぶ沖縄最高の聖地 イザイホーとフバワクという、この地において最も重要な儀式が行われる場所 祝女その他の神女はこの地で就任し、退任する
内部はこのような形状 元々男子禁制だったが、現在は男女を問わず立入禁止 久高の祝女が絶えた今、僅かな神女だけが内部に入ることができる
残念だけど、そうでもしないとこの聖地を守ることができないのだ 1966年の岡本太郎、1992年の五来重、1995年の池澤夏樹、2005年の元NPO団体 頭のおかしいやつはいつの時代もいる
もっとも、観光客だけの責任ではないようで 例えば、地元のおじいが有料で観光客をガイドするツアーがあるんだけど そのおじいは今まさにおれが立っている場所の3m後ろまで車で乗り付けてた
ちょっとガッカリだけど でも、島の人々が生きていくためには仕方がない
ヤグル井泉(やぐるがー) 伊敷浜に漂着した金の壺にまつわる話がここにある どうやら漂着した壺は容易に手にすることができなかったようで このヤグル井泉で身を清めて白衣に着替えることで初めて拾い上げることができたそうだ そしてこの伝承には様々な類型がある 久高島には久高家と外間家、2つの始祖家があるが、両家はかつて反目していた その主導権争いが久高島に伝わる様々な神話に複数のバリエーションを与えたと思われる 類型は次の通り 壺の色には「金」と「白」の2種があり、瓢箪だったという伝承もある 壺の中身には「四穀」「五穀」「七穀」の3種があり、米が含まれないものもある 登場人物には「シマリバーとアカッツミー」「シラタルとアカッツミー」の2種の他に 「アマミキョとシネリキョ」というどこかで聞いた名称が登場するパターンもある
むかしむかし、五穀は、アマミキョとシネリキョが持って来られました。 アマミキョが、瓢箪の中に、麦・粟・豆・アダカ・米を入れて海に流した。 その瓢箪は、やがて久高島の伊敷浜に着いた。 アカチュミ神がそれ取ろうとすると、上手く取れない。 そこで、急いでヤグルガーで身をきよめて再び試みると、取ることが出来ました。 その後、麦・粟・豆などは、ハタシュバルに蒔いたが、 米は百名の受水・走水に持って行って蒔いたそうな。  そう、アマミキヨ伝説の原型 これが沖縄開闢神話へと発展していくわけだ ともあれ、この先に進む気はないなー 暑いし〜危ないし〜おっさんだし〜
で、次
ここが先のハタシュバル 一般的に「ハタス」と呼ばれているところ 前述のように誰が実行者かは諸説あるが、五穀はここで栽培された そして、薮薩御嶽、知念大川を経て沖縄全土に伝わることになる
そんなわけで、久高島に残る様々な神話の遺構を見てきたが ここは神話の世界であると同時に、現実の人間が生活を送っているところ まずはそこを念頭に置かなければならない
我々の神話に対する興味や感傷は島民にとって商品でしかない 共に守る、などどいう温い考えは持っていない その象徴が「久高島土地憲章」だろう この島は村有地を除く全てが共有地であり、売買も貸借も行われていない これは住民の力で島を守ろうとする強い意思の表れだ
外間殿(ふかまどぅん)のウプグイ ここで執り行われる祭祀は次の通り 正月・ソージマッティ(麦と栗の穂祭り)・マッティ(麦と栗の収穫祭) ハンザァナシー(祓い清め)・ウプマーミキ(大漁祈願)・ハティグヮティマッティ(健康祈願) 十五夜(月の祭り/健康祈願)・ハンザァナシー(祓い清め)・マーミキグヮ(大漁祈願)
久高殿(くだかどぅん)の御殿庭(うどぅんみゃー) ここで執り行われる祭祀は次の通り ソージマッティ(麦と栗の穂祭り)・マッティ(麦と栗の収穫祭) ウプマーミキ(大漁祈願)・ハティグヮティマッティ(健康祈願) テーラーガミ(お祓い)・マーミキグヮ(大漁祈願) どちらも現役の祭祀場であって、今日も島民が集う その内部をここで紹介しようとは思わない 繰り返すけど、ここは遺構ではなく、生活の場なのだ
ゆえにこのレポでは大里家を扱うことはしない 今も久高の島民として日々生活が営まれているのだからね (いろいろな伝承があるので語れないのは悔しいけど)
最後に、久高島振興会による注意事項をコピペしておく ---------- 拝所などの聖地は、古来より島の人々は勿論、琉球の人々が大切に守ってきました。 気軽に立ち入れない場所もありますので、訪れる際は良く確認してください。 島から石や植物、動物等を持ち帰らないようにしください。 その場所にあるのが一番(自然との共生)です。 行事、神事の日はカミンチュ(神人)以外集落より北側には行けません。 観光のお客様も残念ですがご理解ください。 島を美しく守るため、持ち込んだ「もの(ゴミとなるもの)」はお持ち帰りください。 この島を自分の故郷だと思って美しい島にすることを心がけ、 ごゆっくり休憩されて気持ちよくお帰りくださいますようお願いいたします。
久高島 面積:1.38ku 海岸線長:8.0km 最高標高17.0m 人口:約260名 主な産業:農業/漁業 特産品:モズク/海ぶどう/イラブー
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